ラストキング・オブ・スコットランド

俺が子供の頃、母親が近所のレンタルビデオ屋からよくビデオを借りてきた。
その中でも印象に残っているタイトル。

それは『食人大統領アミン』。
子供にそんな映画見せんなよ!と言う感じでもあるが、見てしまったものはしょうがない。
そんなわけで俺にはこの映画の強烈な印象が今でも焼きついている。
そのアミン大統領の映画が公開された。
ラストキング・オブ・スコットランド』。
というわけで観て来ました。
この映画、アミン大統領役のフォレスト・ウィテカーがとにかく本物に似ている。
物語は医者になりたての青年ニコラスがウガンダで医療をしようと決める所から始まる。
そのとき新大統領に就任したアミンと出会い、大統領の主治医を任命される。
段々とアミンの本当の素顔を知り、恐ろしくなっていくニコラス。
だが気づいた時にはすべてが遅すぎた。
少しでも怪しい奴は殺す。
俺が失敗したのはお前が止めなかったからだ。
そんな恐怖政治の合間に優しい笑顔を覗かせる。
しかしこのアミンという男は嘘は何一つ言っていないのだと思う。
国を良くしたいという思いは本物だし、ニコラスを息子のように思っていたのも本物の気持ち。
ただ、終盤にニコラスが言った台詞のように「子供」なのだろう。
先生に怒られたときに表面だけ取り繕ってしまう。
それと同じように海外の記者に表面だけを良く見せてしまう。
自分の座を奪われる不安に怯えているから、ちょっとでも怪しい奴は殺してしまう。
そんな子供が本当に怖いのが映像から痛いほど伝わってくる。
また、映画を通してニコラスの気持ちも痛いほどわかる。
俺は日本人だから外国人の無表情と言うのはなんとなく怖いイメージがある。
だから『笑顔』という友好のキーワードを見せてくれると、物凄く安心する。
映画を観ていてアミンが笑顔になると、本当に「助かった」という気持ちになった。
そして友好状態が長く続くと「何を言っても許される」と勘違いしてしまいがちなのも解る。
でもそれは違うんだ。友好の状態を続けているのは彼であって自分じゃない。
あくまで主人はアミンであるという事を、長い友好状態がニコラスを麻痺させている。
子供を病院に連れて行こうとしたときにアミンの妻が嫌がった事や
病院での手術を同僚の医者が嫌がった時に『アミン=恐怖』だと言う事をニコラスは気づくべきだった。
本当に恐ろしい。
でも、これはフィクションだけれど限りなくノンフィクションに近いということが一番恐ろしい。
シナリオに無駄な部分が見当たらない素晴らしい映画でした。